キャリアアップを目指す看護師さんが避けられない道として、「認定看護師」の資格取得があげられます。しかし、一口に認定看護師といっても、実はその種類はさまざまです。
ここでは、どうすれば取得できるのか、合格率はどれくらいなのか、どういった種類があるのかといった疑問にお答えしていきます。
認定看護師の資格を取得するには

認定看護師の資格を取得するには、認定看護師認定審査という試験に合格しなければなりません。この試験は、毎年5月に全国の会場で行われます。
この試験を受験するには、「保健師、助産師、看護師のいずれかの免許を有していること」「5年以上の実務経験(そのうち、通算で3年以上は認定看護分野での経験)」の2つの条件を満たした上で、専門の教育機関に半年通わなければいけません。
もし、やむをえない理由により受験できなかった場合には、看護協会で手続きを行うことで、翌年度の認定審査1回に限り、審査料が免除されます。また、仮に不合格だった場合でも、同じ分野であれば教育機関に通いなおしたりする必要はありません。
試験の合格率はどれくらい?
認定看護師認定審査の合格率は非常に高く、毎年90%以上の受験者が合格しています。
どちらかといえば、試験そのものよりも、それまでの実務経験や職場環境がハードルになることの方が多いようです。
認定看護師の種類

認定看護師は、現在では21種類の分野に分かれています。認定看護師の制度が発足した時点では少ない分野だけしか存在しませんでしたが、その後、必要に応じて分野が認められていき、現在の数に至っています。
以下では、認定看護師の種類とその中身を一つずつご紹介していきます。
【1】救急看護
救急医療現場における臨機応変な対応が求められる分野です。また、危機状況にある患者や家族への早期支援なども行います。
【2】皮膚・排泄ケア
褥瘡などの創傷管理や排泄管理を行う分野です。また、患者や家族の自己管理やセルフケア支援も行います。
【3】集中ケア
生命の危機状態にある患者の病状の悪化を予防することや、二次的合併症の予防に努め、患者が早期に回復できるようリハビリテーションの実施を行う分野です。
【4】緩和ケア
患者を苦しめる肉体的な苦痛症状の緩和に努め、同時に、患者や家族の精神的な苦しみや悲しみのケアを行う分野です。
【5】がん化学療法看護
がん化学療法薬の安全な取り扱いや適切な投与管理を中心とした分野です。また、副作用症状の緩和やセルフケアの支援も求められます。
【6】がん性疼痛看護
がん性疼痛患者に対して痛みの評価を行い、適切な薬剤の使用によって疼痛を緩和させる役割を持った分野です。
【7】訪問看護
在宅療養者のケアを中心とした分野です。人工呼吸器や在宅酸素療法などを装着している患者や、進行性の難病を抱えた患者に対して、訪問看護を行います。
【8】感染管理
病院内のMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)対策や、感染症の発生状況を調査、集計することで、感染症の蔓延と予防に役立てるシステムである「感染症サーベイランス」の実践を主とした分野です。
【9】糖尿病看護
患者や家族と対話を行いながら、心理的ストレスを緩和し、生活習慣の改善や調整を行う分野です。また、糖尿病の自己管理などの支援も行います。
【10】不妊症看護
不妊治療を受けるカップルへ必要な情報を提供することで、自己決定を支援する分野です。
【11】新生児集中ケア
低出生体重児や重症新生児などのハイリスク新生児に対し、病態変化を予測し、予防を行う分野です。また、発育の促進ケアや親子関係を形成するための支援も行います。
【12】透析看護
透析治療を受ける患者が、安全かつ安楽な治療を受けられるよう管理を行う分野です。長期療養生活におけるセルフケアの支援なども行います。
【13】手術看護
手術侵襲(生体を傷つけること)を最小限に抑え、合併症を予防するための安全管理を行う分野です。また、手術前から手術後まで、継続的な看護の実践を行います。
【14】乳がん看護
乳がんの予防や、乳がん患者のセルフケアや自己決定、および、肉体的な変容による精神的・社会的な支援を行う分野です。
【15】摂食・嚥下障害看護
摂食・嚥下障害を持つ患者に対して、適切かつ安全な摂食・嚥下訓練を行う分野です。窒息や栄養低下、脱水などの予防も行います。
【16】小児救急看護
小児救急の現場でトリアージを実施し、子どもの病態に応じた迅速な看護を行う分野です。育児不安や虐待への対応なども行います。
【17】認知症看護
認知症の各期に応じた医療環境の調整や、ケア体制の構築を行う分野です。また、認知症患者の記憶障害や睡眠障害といった周辺症状の予防や、認知症に伴う症状の緩和なども行います。
【18】脳卒中リハビリテーション看護
脳卒中患者の悪化を予防したり、急性期・回復期・維持期における生活再構築のための機能回復支援を行ったりする分野です。
【19】がん放射線療法看護
がん放射線治療に伴う副作用症状の予防や緩和を行うと同時に、安全、安楽な治療環境の提供に努める分野です。
【20】慢性呼吸器疾患看護
慢性呼吸器疾患の患者に対して、呼吸機能の維持や向上のための呼吸リハビリテーションを行う分野です。安定期、増悪期、終末期の各病期に応じて、呼吸機能の評価や呼吸管理も行います。
【21】慢性心不全看護
心不全増悪因子の評価やモニタリングを行う分野です。安定期、増悪期、終末期の各病期に応じて、生活調整やセルフケア支援も行います。
おわりに
認定看護師といっても、その分野は多岐にわたります。自分がキャリアアップを目指す際には、どの分野の認定看護師として活躍したいかを考え、早めの準備を行うことが重要になるでしょう。